米村 孝郎 ~ 繁華街編
新しく引っ越してきた場所は、網走の盛り場の中心部。父親がスナックを経営していたので当然、通勤に便利な場所にしたのだと思われる。
家の前のせまい路地を出ると居酒屋、クラブ、スナックとたくさんの飲食店があり、夜になると酔っ払いのおじさんがふらふらその辺をうろつきまわる賑やかな場所だった。4歳になる頃にはこのおじさんたちに愛嬌を振りまき、おこづかいを手に入れる手法を密かに身につけていた。
いただいたおこづかいは、もれなく近所にあった駄菓子屋(通称おみやげやさん)で使い切っていた。まるでギャンブルに狂ったおじさんのように…(このときの経験からこの後、自分は勝負事に向いてないと思い込みパチンコも競馬もギャンブルらしきものには今日まで一切興味をもたずにすんだ…)
ギヤンブル狂いの4歳児はあろうことか、母親がこつこつ貯めていた小銭の入ったのり箱(プラスチックでなかの見えるやつ)の中からも小銭をくすめて、はずれの駄菓子に変えていった。当然ばれていたに違いないが、母に叱られた記憶がない。
ある朝、いつものようにくすねた小銭を手に握り締め家の前の路地を抜けようとするとそこに近所の悪ガキ達がたむろしていた。一瞬ひるんで立ち止まるが気づかれないようにそーっと通り過ぎようとするとリーダー格の奴に呼び止められ、どこに行くのか尋ねられた。恐怖で声が出ない…すると別の奴らが僕の両腕を両端からつかんだ。こいつ何か持ってる。握り締めた指を一本ずつこじあけられ手のひらから、小銭が地面に転げ落ちた…僕はなぜかこの時の映像が鮮明に記憶に残っている。小銭を盗んだ悪い奴なのに、大事な母親の小銭を見ず知らずの奴に取られたことが悔しくてならなかった。天網恢恢祖にして漏らさず。この言葉を最初に聞いたとき、思い出したのもこのシーンだ。
大勢に襲われた恐怖と奪い取られた小銭の悔しさで涙が止まらなかった。
復讐という感情が芽生えたのはこの時だったのだろうか…いつか、奴らに目にもの喰らわせてやると心に決めた。
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